★小池博史★演出家・振付家・美術家・作家・写真家

by kikh
 
桜が散る
 季節の風景として、また日本の風景として、ぼくが最も好きで、かつ、とっても象徴的な風景は、桜の花びらが春風に乗って、桜の木からひらりと離れ、舞い散り、一斉に空間を彩るときである。その桜の木に6~7割程度の花びらがまだ残っているときが最高である。これは本当に美しい風景で、いつもその真下に立つとくらくらして動きたくなくなってしまう。都会ですらそうなのだから、田舎の山桜の咲く山の中での桜吹雪は、異様なほどの官能性を秘め、恐ろしいほどだ。「桜の森の満開の下」は、日本人の感性のなせる技であって、あの桜の花びらの散るさまとそのしたには死体が埋まっていると感じとる感性は、多くの日本人が持つ感性であろう。坂口安吾が特殊ではないのである。これはいくら西洋人に感じとれと言っても難しいだろう。要するに桜というのは、美しさと同時に恐怖やエロスがあり、死の匂いを孕むものとして日本人は経験的に受け取っている。

 昔、マレーシアで「クアラルンプールの春」という作品をマレーシアのアーティストたちと作ったとき、彼らに桜の恐怖をいくら語っても、桜は美しいものであるという認識以外持っていない南国の人々は、恐怖をほとんど理解できなかったようだ。しかし、花の中で、桜の花びらは群を抜いて怖さとエロスを秘めている。

 ぼくはこの時期、匂い立つ暖かな風が吹き、ひらひらと舞い散る桜の花びらの中に佇むとどこかへ連れ去られる気分になって、空を見上げ、自分の体重が消え去っていく瞬間を毎年のように味わう。
 一年のうちで最も素敵な瞬間である。
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by kikh | 2009-04-12 00:41 | 日々の記録
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