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★小池博史★演出家・振付家・美術家・作家・写真家

by kikh
 
12/30 その後
 「パンク・ドンキホーテ」が終わって10日が経過し、今は「Nobody, NO BODY」の稽古を行なっている。これは1月4日までしかできず、何とかそれまでに一通りあげてしまおうという考えでやっている。すでに9割5分くらいは出来ていて、残りはわずかであるが、詰め作業には絶対に時間を要するから、なんとか1月4日には、と思っているのである。その後、2月下旬まで稽古ができないのだから、必須だ。この間、海外に行ったり、国内での「ガリバー&スウィフト」と「三人姉妹」のツアーがある。そしてその間に台本は2本~3本、書き上げなくてはならないから、容易ではない。

 今日の稽古中に橋本が言っていたこと。「パンク・ドンキホーテ」の感想を何かのサイトに書いている人が結構多くいて、そのうちの半数くらいは下品とか下ネタに嫌になったと書いてあったとのことであるが、笑ってしまった。なんとまあ、悲しいことか、表層しか見えない人が多いのか、と。逆にあまりに表層的で、この国は大丈夫か?と危惧する。どこが下品なのか?僕には理解しがたい。そしてどこが下ネタなのかもまた、理解しがたい。が、分からないでもない。表面だけ見れば、そういう部分はある。しかし、それは猥雑なエネルギーが作品には必須だったからであって、それが目的であるはずがない。少しでもちゃんと見れば誰だって理解するだろう。小学生でさえ分かるのである。しかし、少しばかり知恵の付いた大人は全然ダメだ。表層でしか生きられなくなっている。少しでも下半身に触れていれば、下ネタになってしまうという下劣な精神を持ち続けているのだろう。しかしながら、下は上である。神でもある。下をバカにしちゃいかんのだ。それこそが、最も現代では弱々しくなってしまったエネルギーの源であろう。現代の日本人は、実に弱々しい存在となって、弱々しい舞台やアートを見て、さも知的と考えたり、感動したりしているが、その明白さ、それゆえの弱々しさこそが、今の日本全体の空気を作っている。弱さを実感すること。頭を殴られることの快感を覚えなければ、この国の再生などとてもとてもおぼつかない。人間は生と性、そして全身的な存在であることを強く意識しなくては、本来はこの世界には生きられないのである。
 新聞紙上では、日本の世界的地位低下を嘆く論調ばかりになってきている。民主党もわけがわからないその場しのぎを続けている。こんな風でなんとかなるはずがないことは誰の目にも明らかだろう。しかし、それら無責任、その場しのぎ、そして軽い軽い言葉。吹けば飛ぶような浅はかな言葉の洪水だ。首相の姿はまさしく我々の姿でもある。耳に心地よい言葉を求め、目に心地よい風景や映像を見たがり、心に心地よさばかりを求める、そんな人々はどんどんひ弱になっていく。そして新聞記者たちだって、どこまでも日本を憂い、現代を憂い、どこへ行くのか心配し、だが、行動へと移しかえている人たちはほとんどいないのである。自分の生活さえ安泰であれば、あとは心配面し、悲しげな顔をして、どこ吹く風なのである。
 
 そう言えば先日、小谷野君と飲んでいたとき、ある劇団の話になって、一歩先行けるのは頭が良いから、と彼は言っていたのであるが、一歩先というのは所詮、一歩先で十歩先ではないのである。僕はシャラクセエねえ、一歩先なんてさ、と言いたいのだけれど、全身全霊をあげて百歩先くらいを目指していく気概をもってはじめて、三歩先なり十歩先なりに行けるのである。秀才型の舞台なんて見ていて鼻白む。でも、日本は秀才型を良しとする国である。それは当然なのだ、なぜか。職人国家だからだ。以前も書いているが、職人が悪いわけではない。職人の凄さは重々承知。しかし、職人とは過去の伝統芸の中に生きる人であり、職人芸は、天才によってなる芸というよりは、秀才的辛抱の中に生まれ得る芸であるからして、その根幹をなす思想には触れたくはないという心情が我々、日本の民には溢れているように思えてならない。しかし、アートとは、やはり岡本太郎ではないが、爆発であり、思想的自由である。ゆえにピリピリと苦く、そして激しく、喜びに溢れるものでなければならない。僕は強くそう感じている。

 明日は大晦日。もう一年も終わりだ。毎年、なんと長く、そして短い一年だったか、と思う。短いと言えば短いが充分すぎるくらい長い一年だとも毎年、毎年感じるのである。充実しているとも言えるのだけれど、あまりにプライベートとは縁遠く、自分の事となると何一つと言っていいほど出来ない。自分のことは面倒になってしまうのである。こりゃいけない、とは少しは思うが、すぐに元の木阿弥。まあ、これはこれでいいや、ではあるが、それにしてもなあ、掃除している時間もない。フウ。
by kikh | 2009-12-31 01:06 | うひょひょ!
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